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2008年09月05日

Oさんのトマトとイモ

Ciao. spockです。

9月になりましたねぇ。
秋らしい、スカっとした天気を期待しているのですが、このところの天候は何なんでしょうね。
まだまだ、夏の延長というところでしょうか。
食欲の秋・・・・となるには、もう少し時間がかかりそうですね。


先日、月刊ブレス編集部のウチの担当の方から、予約をもらいました。
前々から、ウチでゆっくりと食事をしたい、と言われていたのですが、やっと時間が取れたそうです。

月刊ブレスの創刊の時期がウチのオープンとほぼ同じ頃だった事や、編集者がいいと思う店しか載せない、と言い切るその方針に共感を覚え、以来、同志のように思えて、ウチの広告の大部分を月刊ブレスにお願いしてきました。

広告の取材の時には、料理の写真撮影の後、その料理は編集者とカメラマンに食べてもらいます。(その料理について書いてもらうのだから当然ですが・・・・)
だから、ブレスのウチの担当の人がウチの料理を一番多く食べている、と言っていいかもしれません。
なので、予約をもらった時に、食べたい料理をリストアップしてファックスで送って、と言っておきました。

と、来ましたねぇ、ファックスが・・・・
で、見てみると、冷たいスパゲッティが書いてある。
う〜ん・・・・どうもオレは冷たいスパゲッティというのが邪道に思えて、ウチの店でやった事は過去2〜3回だけなんですよ。
でもお望みならやりましょう、というわけで、トマトを仕入れに行ったのですが・・・・


オレは『ブランド品』というのがキライです。
ただのバッグでも、ブランドが付くとバカみたいに高くなる・・・・(例外もあるんでしょうが)胡散臭さのカタマリだと思うのですよ。
もっとも、胡散臭いからこそ、みんな高いカネを払うんでしょうけど・・・・
もしオレがブランド品を買うのなら、年月を経て、胡散臭さが抜けたものを買います。
例えば、古いルイ・ヴィトンのバッグだったら、欲しいと思います。
(ウチのジャガーもそのクチですね。もっとも、新車で買うだけのカネはありませんが)

なんかねぇ、野菜にもブランド品が多くなってきたんですよね。
○○産○○トマトとか、○○産○○キャベツとかね。
使ってみようかな・・・・と思わなくもなかったのですが、野菜の場合、胡散臭さが抜けるまで待っていると腐ってしまうので、手を出さなかったのですけどね・・・・
まぁ、基本的に、品種よりも個々の状態を優先するのがオレのやり方なので、例えば、○○産の『フルーツトマト』より、その辺で普通に売っている、完全に熟した『桃太郎』を使っていたわけです。

今年の春、母が友人から紹介されたOさんの作るトマトを買ってきたのですが、

見た目は何の変哲もない、ただのトマトなのに、その旨味と甘味の強い事・・・・それ以後、手に入る限り、Oさんのトマトを使うようになりました。

このトマト、Oさんは普通に売っています。(値段は少し高いですが)
特別な名前を付けているわけでもない・・・・オレは気に入りましたね。
どうしてOさんのトマトだけ違うのか、理由を訊いて納得しました。
水を少ししか与えないで栽培していると言うのです。
なるほど、Oさんのトマトを水に入れると、一気に沈んで行きますが、それだけギッチリと旨味が詰まっているわけなんですね。


そもそもトマトは南米大陸原産で、本来は痩せて乾いた土地で時間をかけて育つものですから、肥沃で雨の多い日本の畑では、早く育つけれど、どうしても水っぽくなるのだと聞いた事があります。
日本でも、南米と同じ条件の温室でトマトを作っている人がいて、そのトマトは高い値段で取引されているとも聞きました。
でも、Oさんのトマトは、せいぜい他の同じようなトマトの1.5倍位の値段で売っています。

水を少ししか与えずに栽培するのでは、手間も時間もかかるはずです。
Oさんは息子さんとふたりで農業をやってみえるので、多量に作る事は難しいでしょう。
でもありがたい事に、ウチでトマトを頼むと、他に売るのとは別に、よく熟したものをとっておいてもらえるのですよ。
おかげで、いいトマトがある時にしか作らない『トマト入りカルボナーラ』を、いつも出す事ができます。

そういえば、オレの料理の師である『ベルゲン』の安田氏は、「料理に使う上で、日本のトマトは、どうしたってイタリアのトマトには敵わない」と、よく言っていましたが、このトマトだったら納得されるんじゃないかと思います。
安田氏は「サラダに使うなら、日本のトマトがいい」とも言っていましたが、実際にOさんのトマトをサラダのドレッシングに使うと、甘過ぎてぼやけた味になってしまいますから、そういう意味でも、イタリアのトマトに比肩するトマトだと言っていいと思いますね。


さて、冷たいスパゲッティのソースを作るのなら、Oさんのトマトが絶対必要です。
朝6時にOさんの家に電話すると、取りに来てもらえるなら畑から取って来る、との返事だったので、母のおぼろげな記憶をたよりに、Oさんの家に向かいました。

Oさんの家の庭にクルマを停めると、Oさんが出て来て、作業場を見せてくれました。
取れ立てのトマトの中から、店で必要な分と、家で食べる分、そして母の友人の分を袋に詰め、ふと横を見ると、こんなトマトが・・・・(何と言う品種か分からないそうですが)

ひとつ摘んで食べてみると、これもまたウマい!! これも袋に詰めました。

で、他に何かないかと作業場の中を見回すと、立派なジャガイモがおいてありました。
これでニョッキを作ったらウマいだろうな、と直感的に思ったので、それも袋に詰め、Oさんに品種を訊くと『キタアカリ』だとの事。

ウチでは、新ジャガの季節はニョッキを作りません。
新ジャガは水分が多過ぎて、ニョッキにすると水っぽくなってしまいます。
ウチのニョッキは普通より粉が少なめで、イモっぽいのが特徴なので、その特徴を生かすためにも、新ジャガの水分が落ち着くまでは、ニョッキは中止するのですが、最近、ニョッキ作りを再開したところだったのですよ。
Oさんのキタアカリが、きっといいニョッキになるのは間違いないでしょう。

Oさんが、キタアカリの横に置いてある、小さな粒のイモを指して、「これはインカの何とかっていうイモなんやけど、煮崩れせんし、栗みたいな味なんやさ」って言うのですよ。
これも思わず袋に詰めましたねぇ。

これがOさんから買ってきた、小粒のイモ『インカのめざめ』です。

うしろのタマネギと比べると、粒の小ささが分かると思います。









これだけ買っても、Oさんの言う値段は驚くほど安いものでした。


さて、この日のブレスの人達に出した料理に、Oさんのところから買ってきたトマトとイモを使ったわけですが、好評でした。

小さなトマトは、前菜としてイタリア産の岩塩を細かくしたものをつけて食べてもらいました。
インカのめざめは、にんじん、ブロッコリと一緒にボイルして、パン粉入りの焦がしバターをかけて、温野菜のサラダに。
冷たいスパゲッティのソースは、かなり強めに塩味をつけないと、全くぼやけた味になってしまうのですが、Oさんのトマトはそんな場合でも、しっかりと甘味と旨味を感じさせてくれます。


オレはプロですから、そこそこの素材でも、きちんとした味を出さなければならないわけですが、いい素材を使う時は本当にラクです。
いい素材は、そこそこアバウトに使ってもいい味が出せますから・・・・

そういう意味でも、素人の方にこそいい素材を薦めたいのですが、Oさんの事はここでは伏せておきます。
何分、生産量が少ないので、みんなが買いに行ったらオレが使えなくなりますから・・・・


その後、Oさんのキタアカリでニョッキを作りましたが、予想通り、いいニョッキができました。
で、その次の日、インカのめざめを使って、ニョッキを作ってみました。

茹でて裏ごしすると、そのままモンブランに使えそうな色です。
実にしっかりとしたイモなので、粉の量は、ごく少量で充分です。

出来上がったニョッキも、かなり黄色いですね。

試食してみると、甘味が強く、弾力もあり、ウマいですよ!!


これからもオレは、ブランド物を避けて「名も無く安くウマい」素材を探しますよ。
まぁね、もともとがアマノジャクな人間ですから・・・・


では、また。
Ciao. Arrivederci!!  続きを読む

Posted by spock at 17:15Comments(8)