スポンサーリンク

この広告は一定期間(1ヶ月以上)更新のないブログに表示されます。
ブログ記事の情報が古い場合がありますのでご注意下さい。
(ブログオーナーが新しい記事を投稿すると非表示になります。)
  

Posted by at

2010年01月15日

敢えてレシピを変える その1

Ciao. spockです。

寒い日が続きますねぇ。
あんまり寒いので、ここしばらくはランチタイムに薪ストーブを焚いています・・・・普段は夜にしか焚かないんですけどね。
炎を見ているだけで、気分的にも暖かくなりますが・・・・このところ、お客さんが少ないんで、どうせなら、こういう日に来てもらえばいいのに、って思ってしまいますね。

この前、山ちゃんが来てくれた時に、冷え切った足をストーブで暖めてもらえましたから、そういう時、焚いていて良かったと思います。
これからも、寒い日には薪ストーブを焚く事にしようと思ってますけど。
  

12月の忙しさに比べると、1月は本当~にヒマです。
楽天的な性格のオレも、ここしばらくはあまりのヒマさに、ウチの店はいつまで続くかな、なんて本気で考えたりもしていたのですが、そういう時に助けられるのは、やはりお客さんですね。
12月にパーティーで初めて来られたお客さんが、今度は個人的に予約を入れて下さったり、カウンターに来られたお客さんから、「本物ほど広く認められるには時間がかかるんだから、この店はこれからだよ」なんて言ってもらえると、すぐに立ち直りますからね。
立ち直りが早いのが、楽天的な人間の長所ですから・・・・

『本物』という言葉を聞いて思い出す事があります。
オレも出演させてもらった、劇団無尽舎のヴィデオ映画『大めいかい』の中で、オレの台詞に「本物は高くつく、という事だ」というのがありましたが、この台詞は、鋭く真実を突いていると思います。
でもね、その台詞を言ったオレが言うのもなんですが、ウチの店に関しては、それは当てはまらないと思いますね。
ウチほど本物を安く出している店は他に無いだろう、って自負してますから。


ここで、お知らせです。
モバイル会員の方にお送りした、新年のメールの特典は、来週の土曜日(23日)が期限です。
お早めにお出で下さい。
また、会員登録していただいた際の特典(焼き菓子)を、まだ受け取っておられない方は、お申し付け下さい。



さて、今回は久しぶりに、料理について書くことにしましょう。
先日、お客さんと、そんな話をしたので。


ウチの料理は基本的に、イタリアでやっているのと全く同じか、できる限り近い状態でお出しすることにしています。
古典的な北イタリア料理を出す事が基本の店ですから、当然なんですけどね。

古典的な料理というのは、長い年月を経て、本当に美味い料理だけが残されてきたわけですから、伝えられてきたレシピの通りにきっちりと作れば、美味い物ができるのが当然なんですね。
そういう料理は、絶妙なバランスの上で成り立っているので、ちょっと色気を出してアレンジしたりすると、一気にバランスが崩れて、訳の分からない料理になってしまうんですよ。

ウチでは基本的に飛騨牛を使わないのも、そういう理由からなんですが(その事についても、近いうちに書くことになると思いますが)、逆に、日本で手に入る食材を使う以上、変えなければならない部分がある事も事実ですね。
まぁ、その見極めが大切なんですが・・・・


ウチでは、今のところ、敢えてレシピを変えて作っている料理が2つあります。
今回は、その料理について書くことにします。

まずはコレ。
ジャガイモのニョッキ Gnocchi di patate です。

ニョッキは、簡単に言えば『団子』みたいなものですが、ジャガイモのニョッキの場合、茹でて裏ごししたジャガイモに、卵黄、塩、ナツメッグ、パルミジャーノ・レッジャーノ、粉を加えて合わせ、フォークで形を作って茹でたものなんですよ。

ウチでは、イモの味を引き立てるために、シンプルな『ピエモンテ風バターソース』でお出ししています。

ウチのニョッキを食べられたお客さんは、たいてい、こんなニョッキは初めて食べた、って言われます。

独自のレシピでやっているのですから、そう言われるのは当然なんですが、ウチのニョッキにハマる方が多い事は事実だと思います。


今でこそ、イタリア料理は広く普及しましたから、そんな事を訊かれる事はなくなりましたが、昔はよく、どうしてイタリア料理を選んだんですか、って訊かれましたねぇ。
そういう時、オレはいつも「ウチの家系は例外なくイモと麺類が好きだから」って答えてました。
冗談半分みたいに聞こえるかもしれないけれど、これは本当の事で、さらに言うなら「ご飯も麺類も硬いのが好きだから」という事になるんですけどね。

そんなイモ大好き人間のオレにとって、ニョッキって、ある意味で中途半端なパスタだったんですよ。
歯応えがあるわけでもないし、イモの味が濃厚なわけでもないし・・・・
もっとイモの味が強く出た方が美味い、ってオレは思っていたわけです。
で、自分なりにいろいろやってみた結果、イモの味をしっかりと出すには、本来のレシピより粉を少なくする事が一番いいと分かったのですよ。
本来のレシピでは、粉はイモの3分の1、ということになっていますが、ウチではその半分位でしょうかね。
まぁ、その時のイモの状態を見て加減するので、ハッキリと数字には出せませんけどね。

ただね、粉を少なくするという事は、当然、食べた時の食感が全く変わってしまいますね。
だから、食感と味のどちらを取るか、と考えた時、オレは味を取ったわけです。
でも、実際に食べてみると、その食感は悪くない・・・・むしろ、この食感を好む人の方が多いんじゃないかと思いましたね。
そう決まれば、その作り方で作るだけですね。


粉を少なくする、という事は、パスタ自体がかなり柔らかくなるわけですから、取り扱いが厄介になります。
形は作りにくいし、下手をすれば、すぐに潰れてしまうし、少しでも長くゆでると、解けて崩れてしまう。
でも、この味を出すにはこれしかない、と思って作れば、それが特別な問題になる程の事ではなかったですね。

ニョッキを作る場合、粘り気を出さないために、熱いうちに、あまりこねくり回さないように合わせるのですが、必然的に、どうしても粉や卵黄が混ざりきらない『部分的なムラ』ができてしまうものなんですよ。
粉を少なくすると、そういう部分的なムラが、さらに多くなってしまう事は避けられません。
粉や卵黄が混ざらなかったイモだけの部分は、ゆでると解けてしまい、バラバラに散ってしまいますから、そういう部分を見極めながらゆでるのが、一番難しいですね。
1人前に1個か2個、一部分崩れたものが混じるのは、避けようがない事ではありますけどね。

ニョッキには、粘り気の弱い『男爵』系のいもが向いているのですが、『インカの目覚め』という、粘り気の強い品種のイモを使ってニョッキを作った事があります。
インカの目覚めの粘り気が、ニョッキに向いていない事は分かっていても、その味と色に惹かれて、どうしても作ってみたくなったわけなんですよ。
で、粘り気を出さないようにしながら、さらに粉を少なくして作ってみたところ、本当に美味いニョッキになったのだけれど、やはり、ゆでるのが難しかったですね。
でも、今度また作ってみたいと思わされる味でした。


そうして作った、イモの味が濃厚なニョッキに合わせるソースは、ニョッキそのものの味を引き立てる、シンプルなソースがいいですね。
ですからウチでは『ピエモンテ風のバターソース』でお出ししています。

北イタリアで良く使われるソースに、ブッロ エ サルヴィア Burro e salvia、または、ブッロ ヴェルザート Burro versato、と呼ばれるものがあります。  
ラヴィオリやニョッキのソースに使われる事が多いのですが、チーズ焼きにした肉料理の仕上げに使われる事もあります。
そのやり方は、ゆで上がったパスタにパルミジャーノ・レッジャーノをかけ、そこへセージ(イタリア語ではサルヴィア)を加えて焦がしたバターをかけるという、シンプルなソースです。

シンプルゆえにヴァリエーションも結構あり、その中のひとつが、パルミジャーノ・レッジャーノの上に少量のトマトソースを載せてから焦がしバターをかける『ピエモンテ風』なんですよ。
白いニョッキに、赤いトマトソース、緑のサルヴィアと、いろどりもいいですね。
ウチでは、自家栽培のセージを使いますが、冬の間だけは、どうしても乾燥もののセージに頼るしかないのは、仕方ないですね。


まぁ、一度ウチのニョッキを食べてみてください。
特に、スーパーなんかで売っている袋詰めのものなんかを食べて、あまりいいイメージを持ってない方には、ぜひ食べて頂きたいですね。
目からウロコが10枚くらい落ちる事は請合いますよ。


ニョッキの事だけで長くなりましたから、レシピを敢えて変えている、もうひとつの料理の事は、次回に書く事にします。

では、また。
Ciao. Arrivederci!!




  

Posted by spock at 10:15Comments(4)料理