2007年12月08日

ミートソースの話 その1

Ciao. 不死鳥座の怪人 spockです。

もう12月も8日ですねぇ。
前回のブログに、国分寺のイチョウの葉の落ち方から見て今年は雪が多いのか少ないのか?、というようなことを書きましたが、いろんな方と話してみると、意外と「少ないだろう」と言われる方が多いですね。
実際にそうであって欲しいと願いながら、化け猫用のスタッドレス・タイヤ(215/65/R15)をヤフオクで探している今日この頃です。


さて今回は、久しぶりに料理の話にしましょうか。
ちょうど作ったばかりなので、ミートソース Salsa alla bolognese (サルサ アッラ ボロニェーゼ)の話にしましょう。

ウチで、ミートソースを使った料理を出す時には『フェットゥッチーネのボローニャ風ミートソース』といったように表記します。
当然、イタリア語で書く時も Fettuccine alla bolognese. のように書きます。

じゃあ、この『ボローニャ風』というのはいったい何なのか、と思われるかもしれませんね。
まず、それについてお話ししましょう。

『イタリア料理用語辞典』の、ミートソースのところを見てみると、
こんなふうに出ています。
ミートソースの話 その1
ragù ラグー(アクセントは後につきます)と salsa alla bolognese サルサ アッラ ボロニェーゼの2種類が出ていますね。
たとえば、スパゲッティ・ミートソースの場合は
Spaghetti al ragù. スパゲッティ アル ラグー あるいは 
Spaghetti alla bolognese.  スパゲッティ アッラ ボロニェーゼの2種類があるわけです。

実を言うと、この仕事を始めてから何年かの間は、ミートソース=ボロニェーゼだと、ズ〜ッと思っていました。
調理師学校でも、就職した店でも、そういう表記しかなかったからなんです。
ところがある時、イタリアの料理人が、ミートソースの事をラグーと呼んでいるのを聞いたのです。
調べてみたところ、2種類の呼び方がある事が分かったのですが、その2種類がどう違うのかについては、誰に訊いても分からなかったし、本で調べても載っていなかったのですよ。

で、何人かのイタリア人に訊いてみました。
それぞれ自信タップリに答えてくれたのですが、訊いた人数分だけ答えが返って来たんですよ。(まぁ、実にイタリア的ではありますが・・・・)
それらの答えの中で一番本当らしいと感じたのは、ある料理人から聞いた「ラグーにフンギ・セッキのもどし汁を入れたのがボロニェーゼ」という説です。

フンギ・セッキ Funghi secchi というのは、フンギ・ポルチーニを乾燥させたものですが、
ミートソースの話 その1
それのもどし汁を使うわけです。
そういうわけで、ウチでミートソースを作る時は、必ずもどし汁と、必要に応じてもどしたポルチーニを細かく刻んだものを入れます。
だから、表記する時も必ず『ボローニャ風ミートソース』と書くんですよ。
もっとも、それを入れた事で、どれくらい味が変わるのかと訊かれると、「ビミョ〜」と答えるしかないんですけどね・・・・


ウチのミートソースの作り方は、だいたいこんな感じです。

材料は、ミンチ、煮込み用炒め野菜、トマトペースト、ブロード、赤ワイン、塩・コショー、オイル。

ミンチは、本当なら、仔牛、牛、牛の赤身、豚のミンチを、同量ずつ使うのですが、仔牛が手に入りにくいので、割合を変えています。

煮込み用炒め野菜(ソッフリット soffritto)は、にんにく、たまねぎ、にんじん、セロリのみじん切り、ローリエ、セージ、ローズマリーを炒めたもので、
ミートソースの話 その1
ウチではほとんどの煮込みに、これを使います。
(ローズマリーとセージは、夏から秋にかけては自分で栽培したものを使いますが、今の時期は量が穫れないので、乾燥のものと合わせて使っています。)

ちなみに、たまねぎ、にんじん、セロリを使う時、比率は必ず3:1:1で使います。
ミートソースの話 その1
調理師学校の講師をしていた時、「どうして3:1:1なんですか」と質問する生徒が毎年必ずいましたが、答えは簡単です。
「3:1:1が一番バランスがいいから。」

ミンチは強火でバラバラになるように炒め、途中、塩・コショーで味をつけておきます。
ミートソースの話 その1

炒めたミンチを、煮込み用のナベに移し、フライパンをそのまま火にかけ、赤ワインを入れて煮立たせ、アルコールを飛ばしながらフライパンに付いた旨味を溶かし、ミンチに加えます。

ここへ、炒めた野菜を加えて良く混ぜ、フタをしてオーヴンへ入れ、約1時間かけて余分な水分を飛ばします。

そこへ、トマトペーストを加えて良く混ぜ、
ミートソースの話 その1
これもオーヴンで約1時間かけて、トマトペーストの臭いと酸味を飛ばします。

後は、ブロードとフンギのもどし汁を加え、オーヴンで煮込んでいきます。
焦がさないように時々かきまぜ、ブロードを足しながら5〜7時間煮込みます。
しっかりと濃度がついたら仕上がりです。  


以前、お客さんが飲みきれずに置いていかれた赤ワインを使って作った事があります。
ミートソースの話 その1
このバルバレスコ(Barbaresco)は本当に美味いワインで、そのお客さんから「あとはマスターが飲んでよ」って言われていたのですが、オレはあんまり飲めませんから、少し味わってから、残りをミートソースに使ったのです。
まぁ、贅沢と言えば贅沢ですが、それで味が変わったかというと・・・・非常にビミョーなところですね。


このミートソースはパスタと合わせてお出しするわけですが、単にソースを温めて合わせるだけではプロの仕事とは言えません。
要するに、さらに旨味を付け足さなければダメなんです。
また、単にミートソースだけで使うのではなく、いろんなものを加えたヴァリエイションも必要です。
それについては、その2で書く事にしましょう。

では、また。
Ciao. Arrivederci!!

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Posted by spock at 08:32│Comments(12)
この記事へのコメント
ワタクシ「ボローニャ」って地名かと思ってましたよ。(^^;)
Posted by ネコ先生 at 2007年12月08日 10:06
ネコ先生
仰るとおり、ボローニャ Bologna は地名です。
それを『ボローニャの』という形容詞にしたのがボロニェーゼ bolognese なんですよ。

古典的な料理において、料理に地名がついている場合は、作り方や食材がハッキリと決められている事が多いのです。
ウチの料理は古典的なものが多い事もあり、オレはその作り方や食材をきちんと守った上で、お出ししたいのです。

上にも書いたように、それを守らなかったからといって、味が全く変わってしまう事は少ないのかもしれません。
でも、そこをしっかりと抑えておきたいんですよ。
まぁ、自己満足と言われれば、その通りなんですけどね・・・・
Posted by spockspock at 2007年12月08日 13:28
すごい
そのびみょ〜とビミョ〜が相まって
美味い物が出来上がって行くのでしょうね、
なんだか嬉しいっす
何でだろ?
Posted by かへる at 2007年12月08日 15:49
かへるさん

料理に限らず、物ってビミョ〜な感覚の積み重ねで出来るものですよね。
で、それらを取りまとめるのが、数多くの経験から生み出される『直感』なのだと思います。

オレは、その『直感』が使える事が、プロフェッショナルの必要最低条件だと思うのですよ。
たぶん、かへるさんも同じような事を感じておられるのでは・・・・
Posted by spockspock at 2007年12月09日 14:55
こんにちは。

私もボロニェーゼとラグーの違いてなんなんだろう?ってずっと思ってました。
spockさんのページ見てると本当に勉強になりますm(__)m
Posted by ぶーさん at 2007年12月09日 18:30
直感!
すんません
あちくしの中でほとんどを占めてます
出来るか出来ないか
笑顔が見えるか見えないか
その笑顔の意味は?
本当の笑顔か?





今ほんと
Posted by かへる at 2007年12月09日 23:08
こんにちは、ぷーさん。

参考にしてもらえればいいのですが、まぁイタリア人の言った事ですから、本当に正解なのかは?ですね。
でもオレは、それを信じて、ズーッと『ボロニェーゼ』を作っていきますよ。
Posted by spockspock at 2007年12月10日 16:25
かへるさん

オレも同じです。
ほとんど直感だけで仕事をしているような・・・・

まぁ、直感が冴えている時は、出来上がった料理も納得できる物である事が多いですね、
Posted by spockspock at 2007年12月10日 16:29
今日は長い時間おじゃましました!
とっても美味しいお料理、お酒・・・・みんな満足してくださいました☆ありがとうございました!

私は、spockさんのブログを見ていたので、余計に楽しくいただけました。
どのお料理も、手がこんでいて、素晴らしかったです☆

次回は・・・・ずっと行きたがっている主人と・・・・行けたらいいなぁ~って思っています!

また、仕事のほうで、お願いにあがるかもしれませんが、よろしくお願いします。


とてもいい会になりました!
感謝しています!
Posted by ドラゴンママ at 2007年12月10日 23:24
ドラゴンママさん

こちらこそ、ありがとうございました。
皆さんに満足して頂けたのなら、本当にうれしく思います。

たぶん今回のブログを読んでおられるだろうと思って、パスタの1つは『ボロニェーゼ』にしてみたのですが、いかがでしたか。

次回は是非ご主人と御一緒にどうぞ。

ウチで出来る事なら、なんなりと申し付けて下さい。お待ちしてます。
ありがとうございました。
Posted by spockspock at 2007年12月11日 08:25
どうも~ 先日は、折角お誘いいただいたのにゴメンナサイ。

『ボロニェーゼ』食べに行きたいです。
もどし汁を加える事を知り、おぉぉ~って感じでした。


さて、PIT×NE戦を観ましてガックリきております・・・
ポーラマルがいないから、無理かもなぁ~って思っていましたが、ポーラマル以前に、強すぎる・・・と言いますか!? 運がありすぎると言いますか・・・
先週のBAL戦でもそう感じました。
ブレイディが嫌いなわけではありませんが、ビル・ベリチックが、あまり好きじゃないので、誰か止めてくれ~と思っています^^

ブロンコスも、最後まで微妙ですね~
NFCよりAFCの方が、断然レベルが高いんじゃないの!?と感じている 
                   たけちでした。
Posted by たけち at 2007年12月11日 20:49
たけちさん

ボロニェーゼ、ぜひ食べに来て下さい。

PITxNE戦は、結果を先に知ってしまったので、録画してないのですが、NEはそんなに強いですか・・・・
オレもNEはあんまり好きじゃないです。(特別嫌いな理由があるわけではないのですが・・・)
ポーラマルは、リンチと並んで大好きなプレイヤーなので、早く復活してほしいですね。

D・ウィリアムスが射殺された事件から始まった今年は、デンヴァーにとっては厄年なのかもしれませんね。
確かにAFCの方がレヴェルが高いように思えますが、これで(ワイルドカードであっても)プレイオフに出場できたら奇跡ですね。

そういえば、マイケル・ヴィックは、23ヵ月の禁固刑が確定したようです。 フィールドに戻る事ができるのでしょうかね。


ところで、今日の昼はヒマですが、やりますか?
あんまり寒かったら無理ですが、ショルダーを着けてやってみるのも面白いかも。
では、また。
Posted by spockspock at 2007年12月12日 09:42
 
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