2014年01月06日
うれしく思う事
Buon Anno!! spock です。
なんか、バタバタしているうちに、新しい年になってしまいましたが、旧年中は本当にお世話になりました。
本年もよろしくお願いします。
相変わらずひとりでバタバタとやっているので、年賀状も作っておらず、2日に大きい予約が入った事もあって、3日になって、あわてて年賀状を作っている状況で・・・・
去年は、このブログの更新頻度が、あまり高くなかった上、内容的にも、音楽方面に偏っていたかな、と思います。
高山室内合奏団の第10回記念定期演奏会では、ベートーヴェンの運命という難曲への挑戦だったため、特に7月8月は、仕事をしている時の他は、ずーっとその事ばかり考えているような状態でしたから、どうしても、音楽関係の方へ向いてしまっていた事は否めませんが・・・・
今年の第11回定期演奏会(8月31日)は、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲をメインとするプログラムが決まったので、練習が佳境に入る頃は、また音楽の話が多くなると思いますが、それ以外の時は、料理関係の事や、ウチの店の、というよりオレの料理に対する考え方みたいな事を、もっと多く書いていきたいと思っています。
さて、この12月は結構忙しかったのだけれど、お客さんの入り方が、なんかいつもとは違うなぁ、って思ってました。
一番忙しいはずの時期に、全く誰も来なかった日があったし、クリスマスも本当に静かだった・・・・でも、大きい予約が入っていた事もあって、全体の売り上げとしては結構良かったんですよね。
まぁ、そういう意味ではありがたかったのですけどね。
ただ、もともとオレ自身は、クリスマスのような予約が集中する日より、誕生日や記念日などの自分の大切な日に、ゆっくりと食事をしてもらう方がいいと思っていましたから、いつかはクリスマスメニューを止めようと思っていたのですが、今年の状況を見る限り、ちょうどいい時期が来たようです。
だから、来年からクリスマスメニューを止める事にしますが、その方が「我が道を行く」ウチらしくていいんじゃないかと思いますね。
去年を振り返って見ると、ある意味で、変革の時期に来ていたんだと思います。
ウチがオープンした年から、ずっとランチを手伝ってもらっていた優子さんと門さんが、それぞれの事情で辞める事になったのが5月の事。
その後、手伝いに来てくれるようになった人も、実に良く気がつく人で、いい人に来てもらえたと喜んでいたのだけれど、11月になって体調不良を訴え、病院で検査してもらったところ、妊娠している事が判って、辞める事になったわけです。
それ以降は人は探さず、ランチはオレひとりでカウンターのみの営業にする事にしました。
カウンター席が5席しかない事や、テーブル席でなけれは、というお客さんもおられるので、ランチの客数は少し減ったけど、逆に良い点も見えてきましたね。
それは、お客さんと直接話しができるという事。
お客さんの質問に答える事や、料理について詳しく説明する事で、北イタリア料理に関する事や、ウチが何故予約貸切制でコース料理だけをお出ししているのか、という事も理解してもらえるわけで、さらに、以前より4ページ増えたパンフレットを読んでもらう事で、理解度が飛躍的に向上するわけです。
そのせいもあってか、ランチに来られたお客さんがディナーの予約をして下さる事が、かなり多くなったと思います。
ランチを食べ終わったその場で予約を入れて帰られる方もおられるし、持ち帰ったパンフレットをじっくりと読んで、予約の電話を下さる方もおられますが、以前に比べ、ウチの料理について、しっかりと理解して来て下さる方が増えた事を実感しています。
ウチのような(ある意味で特殊な)解りにくい店の場合、はなから全ての人に理解してもらえるなんて思ってはいませんが、やはり、きちんと説明して理解してもらう、という事が一番重要なのだと改めて思うと共に、これが正解なんじゃないかと思うわけです。
以前にも書いた事があるけれど、コースで料理を食べる事は、人生を豊かにするための最高の方法のひとつだと、オレは思っています。
でも、それを楽しみながら全てをきちんと食べるには、それなりの経験や慣れが必要な事も確かで、初めての人にとっては、取っ付きにくい事である事は間違いないのでしょうが、それだからこそ、ウチがその足掛りを作って行く必要があると思うわけです。
まぁ、実に地道な行為ではありますが、それがウチの使命だと確信していますから、今年もその方向でやっていきたいですね。
こんなに面倒で儲けの出ない事を何故やるのかといえば、オレが一番好きな北イタリア料理を、前菜からメイン料理まで、きちんと食べてほしいからだし、それによってお客さんに喜んでもらいたいからなんですが、それ故、美味しかった、と言われる事は、本当にうれしいですね。
まぁね、プロがいちいちそんな事を気にするなんて、という考え方もありますが、オレは素直に喜びたい。
また、初めてウチに来られたお客さんが、もっと早く来ればよかった、なんて言われる事もありますが、そういうのもうれしいものです。
時々、全く何も言わずに帰られるお客さんもみえますが、そんな時は、気に入ってもらえなかったのかなぁ、って考え込む事もあるのだけれど、そのお客さんがリピーターとして来てくれたときは、やっぱりうれしいものですよね。
それから、子供の評価というのは、大人よりストレイトにものを言うだけに、本当に怖いものですが、小さい子供が一心不乱に料理を食べているのを見た時、この子は本当に気に入って食べてくれているんだなぁ、ってうれしく思うし、親御さんから「いつもは食べない子なのに、今日はこんなに食べた」って言われる事がよくありますが、それもやっぱりうれしいものです。
また、それとは違う意味でうれしく思う事があります。
今まで好きじゃなかったのに、ウチのを食べたら好きになった、と言われる事。
それは、ミートソースであったり、スパゲッティ カルボナーラであったり、肉料理であったり、人によっていろいろありますが「手間隙かけてきちんと作ったイタリア料理は、こんなに美味いんだ」という事を納得してもらえたわけですからね。
で、この前、こんな事がありました。
以前からウチを贔屓にしていただいている、あるグループ企業の会長さん夫妻が、単身赴任をしてもらっている社員と、その家族を労うために、食事会をされた事がありました。
予約を頂いた時に、子供の一人は肉が全く食べられない、と聞いていたので、魚料理が多めになるようにメニューを考えていたのだけれど、実際に料理を出してみると、魚介類もダメだと言うのです。
急遽、その子が好きだというチーズを使った、4種チーズソースのパスタを大盛りで作って出し、その後で他の人の肉料理(子牛の骨付きロースのミラノ風カツレツ)をお出ししたのですが、しばらくすると、会長夫人に呼ばれました。
で、行ってみると、その子がミラノ風のカツレツを食べているんですよ・・・・それも、他の人の分も貰って2人前も。

ご両親は、「この子が生まれて初めて自分から肉を食べた」って驚いてみえたのですが、その後で、その子がこんな事を言いました。
「僕は今中学生だけれど、大人になったら、チーズのパスタと、このカツを食べに来ますから、それまでこの店を続けていて下さい。」
いや、もう、なんと言うか・・・・感動しましたねぇ。
そんなふうに言ってもらえた事もうれしかったけど、今まで食べられなかった肉が食べれるようになったという事は、大げさな言い方かもしれないけど、その子の人生が変わった、と言ってもいいのではないかと思うわけです。
ホント、この仕事をしていて良かったなぁ、と思う出来事でした。
ただ、誤解してもらいたくないのは、ここに書いた事で、オレの作る料理はこんなにすごいんだぞ、と自慢しているのではないという事。
すごいのは、そういう料理を考え、改良し、完成させたイタリアの人達であって、オレがやっているのは、イタリアでやっている事を、そのまま変えずにやっているだけなんですよね。
この上の方で、ミラノ風のカツレツについて、リンクするようにしてあり、そこでは、ミラノ風のカツレツを作る工程を、画像入りで紹介していますが、その中にも書いているように、そこにある工程をすべてやって、初めて『ミラノ風』を名乗る事ができるんです。
だから、見た目をそれらしくやっただけで『ミラノ風』を名乗ったら、それはウソになるわけだし、それで他人を感動させる事なんかできないと思います。
オレは、イタリア料理が好きだから、自分の仕事としてやっているわけで、それだからこそ、イタリアのやり方を変える事無くやっているわけです。
イタリアの長い歴史の中で、改良され、淘汰され、完成された料理だけが残ってきたわけですから、たかだか経験が30数年のオレがどんなにがんばって弄くり回したところで、オリジナルに敵うわけがないでしょう。
もし、自分のやり方でアレンジした料理をやりたいのだったら、はなから『イタリア料理』なんて名乗らないし、それがイタリアの文化に対する礼儀だと思いますね。
さて、以前、ミラノ風のカツレツや、ヴァッレダオスタ風チーズ焼きを作る工程を紹介しましたが、同様に今回は、ミートソースを作るところを画像で紹介します。
おそらく、これほど濃厚なミートソースは、ちょっとないと思います。
でもオレは、ミートソースはこれくらい濃厚でなければ美味くないと思っているので、習った方法をきちんと守りながら、一切手抜きなしで、とにかく時間をかけて煮込んでいます。
自分で言うのもなんですが、このソースをフェットゥッチーネや、ホウレン草入りのタリアテッレと合わせたものは「絶品」と言っていいと思います。
「ミートソースは嫌いだったけど、ラ フェニーチェのミートソースを食べて好きになった」と言われる事がよくありますが、ウチのミートソースを食べてダメだったら、もうミートソース食べる事は諦めた方がいい、と敢えて言わせてもらいましょう。
では、ミートソースを作る工程を、順に見ていきましょう。
まず、最初に準備するのが、炒め野菜 Soffritto. (ソッフリット)
タマネギ、ニンジン、セロリを、ニンニクや香辛料といっしょに炒めたもので、肉を煮込む場合には必ず使います。

これは、ソースを仕込む前日に作っておきます。
ひき肉を炒めながら、しっかりと塩コショーをしておきます。

炒めたひき肉は、ソッフリットと共に、煮込み用の鍋に入れます。
ひき肉を炒めたフライパンを火にかけ、赤ワインを入れて煮立たせ、

アルコールに火をつけて、消えたら鍋に入れます。
鍋の中身をよーく混ぜ合わせ、

フタをしてオーヴンに入れ、水分とワインの酸味を飛ばします。
トマトペーストを加えて、よーく混ぜ合わせ、

オーヴンで火を入れながら、トマトの余分な酸味を飛ばします。
ここへ、ブロード(ブイヨン)と乾燥ポルチーニの戻し汁を加えて混ぜ合わせ、

フタをしてオーヴンに入れ、煮込みます。
以前、イタリアの料理人が、乾燥ポルチーニの戻し汁を入れた場合だけ Salsa alla bolognese と名乗る事が出来る、と言っていたので、ウチでは必ず加えて、『ボローニャ風ミートソース』と表記しています。
焦げないように時々底から混ぜながら、じっくりと煮込んでいきます。
途中でブロードを足したりして濃度の調整をしながら、だいたい10時間くらい煮込むと、こんな感じ。

日本では、ミートソースというとスパゲッティと合わせるもののように思われているようだけれど、リングイーネ、フェットゥッチーネ、タリアテッレのような手打ち麺と合わせる方が、ソースと絡みやすくて美味しく食べる事ができます。
また、このミートソースを使って作るラザーニェ Lasagne verdi alla bolognese は、本当に美味いですよ。
ただ、間違えてほしくないのは、あくまでも、パスタを美味しく食べるためのソースだという事。
パスタを美味しく食べるために、手間隙をかけてソースを作るわけです。
手間隙かけたミートソース使ったパスタを、ぜひ一度味わってみて下さい。
では、また。
Ciao. Arrivederci!!
なんか、バタバタしているうちに、新しい年になってしまいましたが、旧年中は本当にお世話になりました。
本年もよろしくお願いします。
相変わらずひとりでバタバタとやっているので、年賀状も作っておらず、2日に大きい予約が入った事もあって、3日になって、あわてて年賀状を作っている状況で・・・・
去年は、このブログの更新頻度が、あまり高くなかった上、内容的にも、音楽方面に偏っていたかな、と思います。
高山室内合奏団の第10回記念定期演奏会では、ベートーヴェンの運命という難曲への挑戦だったため、特に7月8月は、仕事をしている時の他は、ずーっとその事ばかり考えているような状態でしたから、どうしても、音楽関係の方へ向いてしまっていた事は否めませんが・・・・
今年の第11回定期演奏会(8月31日)は、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲をメインとするプログラムが決まったので、練習が佳境に入る頃は、また音楽の話が多くなると思いますが、それ以外の時は、料理関係の事や、ウチの店の、というよりオレの料理に対する考え方みたいな事を、もっと多く書いていきたいと思っています。
さて、この12月は結構忙しかったのだけれど、お客さんの入り方が、なんかいつもとは違うなぁ、って思ってました。
一番忙しいはずの時期に、全く誰も来なかった日があったし、クリスマスも本当に静かだった・・・・でも、大きい予約が入っていた事もあって、全体の売り上げとしては結構良かったんですよね。
まぁ、そういう意味ではありがたかったのですけどね。
ただ、もともとオレ自身は、クリスマスのような予約が集中する日より、誕生日や記念日などの自分の大切な日に、ゆっくりと食事をしてもらう方がいいと思っていましたから、いつかはクリスマスメニューを止めようと思っていたのですが、今年の状況を見る限り、ちょうどいい時期が来たようです。
だから、来年からクリスマスメニューを止める事にしますが、その方が「我が道を行く」ウチらしくていいんじゃないかと思いますね。
去年を振り返って見ると、ある意味で、変革の時期に来ていたんだと思います。
ウチがオープンした年から、ずっとランチを手伝ってもらっていた優子さんと門さんが、それぞれの事情で辞める事になったのが5月の事。
その後、手伝いに来てくれるようになった人も、実に良く気がつく人で、いい人に来てもらえたと喜んでいたのだけれど、11月になって体調不良を訴え、病院で検査してもらったところ、妊娠している事が判って、辞める事になったわけです。
それ以降は人は探さず、ランチはオレひとりでカウンターのみの営業にする事にしました。
カウンター席が5席しかない事や、テーブル席でなけれは、というお客さんもおられるので、ランチの客数は少し減ったけど、逆に良い点も見えてきましたね。
それは、お客さんと直接話しができるという事。
お客さんの質問に答える事や、料理について詳しく説明する事で、北イタリア料理に関する事や、ウチが何故予約貸切制でコース料理だけをお出ししているのか、という事も理解してもらえるわけで、さらに、以前より4ページ増えたパンフレットを読んでもらう事で、理解度が飛躍的に向上するわけです。
そのせいもあってか、ランチに来られたお客さんがディナーの予約をして下さる事が、かなり多くなったと思います。
ランチを食べ終わったその場で予約を入れて帰られる方もおられるし、持ち帰ったパンフレットをじっくりと読んで、予約の電話を下さる方もおられますが、以前に比べ、ウチの料理について、しっかりと理解して来て下さる方が増えた事を実感しています。
ウチのような(ある意味で特殊な)解りにくい店の場合、はなから全ての人に理解してもらえるなんて思ってはいませんが、やはり、きちんと説明して理解してもらう、という事が一番重要なのだと改めて思うと共に、これが正解なんじゃないかと思うわけです。
以前にも書いた事があるけれど、コースで料理を食べる事は、人生を豊かにするための最高の方法のひとつだと、オレは思っています。
でも、それを楽しみながら全てをきちんと食べるには、それなりの経験や慣れが必要な事も確かで、初めての人にとっては、取っ付きにくい事である事は間違いないのでしょうが、それだからこそ、ウチがその足掛りを作って行く必要があると思うわけです。
まぁ、実に地道な行為ではありますが、それがウチの使命だと確信していますから、今年もその方向でやっていきたいですね。
こんなに面倒で儲けの出ない事を何故やるのかといえば、オレが一番好きな北イタリア料理を、前菜からメイン料理まで、きちんと食べてほしいからだし、それによってお客さんに喜んでもらいたいからなんですが、それ故、美味しかった、と言われる事は、本当にうれしいですね。
まぁね、プロがいちいちそんな事を気にするなんて、という考え方もありますが、オレは素直に喜びたい。
また、初めてウチに来られたお客さんが、もっと早く来ればよかった、なんて言われる事もありますが、そういうのもうれしいものです。
時々、全く何も言わずに帰られるお客さんもみえますが、そんな時は、気に入ってもらえなかったのかなぁ、って考え込む事もあるのだけれど、そのお客さんがリピーターとして来てくれたときは、やっぱりうれしいものですよね。
それから、子供の評価というのは、大人よりストレイトにものを言うだけに、本当に怖いものですが、小さい子供が一心不乱に料理を食べているのを見た時、この子は本当に気に入って食べてくれているんだなぁ、ってうれしく思うし、親御さんから「いつもは食べない子なのに、今日はこんなに食べた」って言われる事がよくありますが、それもやっぱりうれしいものです。
また、それとは違う意味でうれしく思う事があります。
今まで好きじゃなかったのに、ウチのを食べたら好きになった、と言われる事。
それは、ミートソースであったり、スパゲッティ カルボナーラであったり、肉料理であったり、人によっていろいろありますが「手間隙かけてきちんと作ったイタリア料理は、こんなに美味いんだ」という事を納得してもらえたわけですからね。
で、この前、こんな事がありました。
以前からウチを贔屓にしていただいている、あるグループ企業の会長さん夫妻が、単身赴任をしてもらっている社員と、その家族を労うために、食事会をされた事がありました。
予約を頂いた時に、子供の一人は肉が全く食べられない、と聞いていたので、魚料理が多めになるようにメニューを考えていたのだけれど、実際に料理を出してみると、魚介類もダメだと言うのです。
急遽、その子が好きだというチーズを使った、4種チーズソースのパスタを大盛りで作って出し、その後で他の人の肉料理(子牛の骨付きロースのミラノ風カツレツ)をお出ししたのですが、しばらくすると、会長夫人に呼ばれました。
で、行ってみると、その子がミラノ風のカツレツを食べているんですよ・・・・それも、他の人の分も貰って2人前も。

ご両親は、「この子が生まれて初めて自分から肉を食べた」って驚いてみえたのですが、その後で、その子がこんな事を言いました。
「僕は今中学生だけれど、大人になったら、チーズのパスタと、このカツを食べに来ますから、それまでこの店を続けていて下さい。」
いや、もう、なんと言うか・・・・感動しましたねぇ。
そんなふうに言ってもらえた事もうれしかったけど、今まで食べられなかった肉が食べれるようになったという事は、大げさな言い方かもしれないけど、その子の人生が変わった、と言ってもいいのではないかと思うわけです。
ホント、この仕事をしていて良かったなぁ、と思う出来事でした。
ただ、誤解してもらいたくないのは、ここに書いた事で、オレの作る料理はこんなにすごいんだぞ、と自慢しているのではないという事。
すごいのは、そういう料理を考え、改良し、完成させたイタリアの人達であって、オレがやっているのは、イタリアでやっている事を、そのまま変えずにやっているだけなんですよね。
この上の方で、ミラノ風のカツレツについて、リンクするようにしてあり、そこでは、ミラノ風のカツレツを作る工程を、画像入りで紹介していますが、その中にも書いているように、そこにある工程をすべてやって、初めて『ミラノ風』を名乗る事ができるんです。
だから、見た目をそれらしくやっただけで『ミラノ風』を名乗ったら、それはウソになるわけだし、それで他人を感動させる事なんかできないと思います。
オレは、イタリア料理が好きだから、自分の仕事としてやっているわけで、それだからこそ、イタリアのやり方を変える事無くやっているわけです。
イタリアの長い歴史の中で、改良され、淘汰され、完成された料理だけが残ってきたわけですから、たかだか経験が30数年のオレがどんなにがんばって弄くり回したところで、オリジナルに敵うわけがないでしょう。
もし、自分のやり方でアレンジした料理をやりたいのだったら、はなから『イタリア料理』なんて名乗らないし、それがイタリアの文化に対する礼儀だと思いますね。
さて、以前、ミラノ風のカツレツや、ヴァッレダオスタ風チーズ焼きを作る工程を紹介しましたが、同様に今回は、ミートソースを作るところを画像で紹介します。
おそらく、これほど濃厚なミートソースは、ちょっとないと思います。
でもオレは、ミートソースはこれくらい濃厚でなければ美味くないと思っているので、習った方法をきちんと守りながら、一切手抜きなしで、とにかく時間をかけて煮込んでいます。
自分で言うのもなんですが、このソースをフェットゥッチーネや、ホウレン草入りのタリアテッレと合わせたものは「絶品」と言っていいと思います。
「ミートソースは嫌いだったけど、ラ フェニーチェのミートソースを食べて好きになった」と言われる事がよくありますが、ウチのミートソースを食べてダメだったら、もうミートソース食べる事は諦めた方がいい、と敢えて言わせてもらいましょう。
では、ミートソースを作る工程を、順に見ていきましょう。
まず、最初に準備するのが、炒め野菜 Soffritto. (ソッフリット)
タマネギ、ニンジン、セロリを、ニンニクや香辛料といっしょに炒めたもので、肉を煮込む場合には必ず使います。
これは、ソースを仕込む前日に作っておきます。
ひき肉を炒めながら、しっかりと塩コショーをしておきます。
炒めたひき肉は、ソッフリットと共に、煮込み用の鍋に入れます。
ひき肉を炒めたフライパンを火にかけ、赤ワインを入れて煮立たせ、
アルコールに火をつけて、消えたら鍋に入れます。
鍋の中身をよーく混ぜ合わせ、
フタをしてオーヴンに入れ、水分とワインの酸味を飛ばします。
トマトペーストを加えて、よーく混ぜ合わせ、
オーヴンで火を入れながら、トマトの余分な酸味を飛ばします。
ここへ、ブロード(ブイヨン)と乾燥ポルチーニの戻し汁を加えて混ぜ合わせ、
フタをしてオーヴンに入れ、煮込みます。
以前、イタリアの料理人が、乾燥ポルチーニの戻し汁を入れた場合だけ Salsa alla bolognese と名乗る事が出来る、と言っていたので、ウチでは必ず加えて、『ボローニャ風ミートソース』と表記しています。
焦げないように時々底から混ぜながら、じっくりと煮込んでいきます。
途中でブロードを足したりして濃度の調整をしながら、だいたい10時間くらい煮込むと、こんな感じ。
日本では、ミートソースというとスパゲッティと合わせるもののように思われているようだけれど、リングイーネ、フェットゥッチーネ、タリアテッレのような手打ち麺と合わせる方が、ソースと絡みやすくて美味しく食べる事ができます。
また、このミートソースを使って作るラザーニェ Lasagne verdi alla bolognese は、本当に美味いですよ。
ただ、間違えてほしくないのは、あくまでも、パスタを美味しく食べるためのソースだという事。
パスタを美味しく食べるために、手間隙をかけてソースを作るわけです。
手間隙かけたミートソース使ったパスタを、ぜひ一度味わってみて下さい。
では、また。
Ciao. Arrivederci!!
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Posted by spock at 08:07│Comments(0)
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