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2013年03月05日

シンプル故の・・・・

Ciao. spockです。

まだまだ寒い日が続いていますが、時々、春の陽気を感じられるようになりました。
確実に春は近づいているんでしょうが、この冬の寒さが長く続いた分、早く暖かくなってほしいものです。

ウチに限ったことではないと思いますが、正月明けから3月の前半というのは、一年のうちでも一番ヒマな時期です。
だから、どこの店でも、やりくりが大変な時期だと思いますが、それ故に、こういう時期に来て下さるお客さんは、本当にありがたいですね。
ヒマな時期ゆえ、十分に手間をかけた料理も作れますから、こういう時期に来ていただく方が、いいものをお出しできるという理由もあるんですけどね。


ところで、前回のブログをアップした後、来て下さったお客さんから、指は大丈夫ですか、と訊かれて驚いたのですが、こんなブログでも、ちゃんと読んでいて下さる方がおられる事を、本当にうれしく思いました。(おかげさまで、ヴァイオリンの発表会では、無事弾きとおす事ができました)
中身の濃さでは、他のどのブログにも負けない自信はありますが、それ故、更新頻度が極端に低くなってしまいます。
まぁ、そんなブログですが、見捨てる事無く読んで頂ければ幸いです。


さて、今回も料理の紹介です。
今回紹介する料理は、オマールと魚介類のナポリ風ワイン蒸し Astice con frutti di mare alla napoletana. です。

この料理については、2年ほど前にも書いた事があるのですが、当時は活けのオマールを使っていたため、コースに入れると8000円を超えてしまうので、どなたにもお薦めするというわけにはいきませんでしたが、その後、良い状態で冷凍されたオマールが入るようになったので、6300円のコースに入れる事も可能になりました。
イタリアらしい、シンプルそのものの料理ですが、そのため、ソースなどで誤魔化すのではない、素材本来の美味さをストレートに味わってもらえます。

オマールは、イタリア語では Astice アスティチェ(アクセントは最初のアにつきます)と言いますが、そのアスティチェは、こんなふうに冷凍されてきます。


これを解凍したところで、2つに割って内臓と背ワタを取り、ハサミの部分も食べやすいように割っておきます。


鍋にオリーヴオイルを入れ、そこへアスティチェ、イカ、タコ、アサリを加え、火にかけます。
火が入ってきたところでブランデーを入れてフランベし、


白ワインを加えてフタをし、オーヴンでワイン蒸しにします。
時間にして数分、とにかく火を入れすぎない事が重要です。


アスティチェと魚介類を皿に盛り付け、鍋に残ったスープの味を調えて全体にかけます。


この料理をお出しする時には、フィンガーボウルと、細かいところをほじくるための細いスプーン、最後にスープを味わってもらうためのスプーンも一緒にお出しします。
ハサミの部分は、カラを割ってあるので、手で引っ張れば、中の身がスッポリと抜けますから、そのままかぶりついてもらえばいいかと。

でも、なんと言っても一番美味いのは、全部の味が出たスープです。
これを残される方がおられますが、もったいない事だと思います。
少し遅らせて、熱々のパンをお出しするので、パンにスープをつけて食べてもらうのもいいですね。


上にも書いたけれど、この料理はシンプルそのものの料理ですから、全く誤魔化しがきかないので、作る時は緊張しますね。
一番気を使うのが、火の入れ具合です。
アスティチェのプリプリした歯ごたえを感じられるところでオーヴンから出さないと、カスカスになってしまいますからね。

お客さんの食べるスピードを見ながら作るわけですが、標準的なスピードのお客さんなら、2つ目のパスタを出した後くらいに作り始めると、ちょうどいいくらいに仕上がります。
身に火が入り、ミソにもギリギリ火が入ったくらい・・・・だから、ホントに数分の事です。
3000円もする活けのアスティチェを使っても、ここで火を入れすぎたら終わりです。
冷凍のアスティチェでも、ここさえキチンとおさえて作れば、最高に美味いものが出来ますよ。

スープは、基本的に何も加えず、塩味がちょうどになるように濃度を調整する・・・・それだけです。
魚介類から出るスープの味は、一回ごとに微妙に違いますから、ほんの少しの塩を加える事もありますが、めったにはやらない事ですね。
オレは最後に少量のオリガノを加えて仕上げますが、これは好みの問題もあって、ない方がいいという人がいても不思議はないでしょうね。

以前のブログに、イタリア料理はムダなものを削ぎ落としたシンプルな料理だ、と書きましたが、この料理は、これ以上削ぎ落とすものがないくらいシンプルな料理、という意味で、本当にイタリア料理らしい料理だと思います。
それだからこそ、料理人の技術がストレイトに出てしまう、恐ろしい料理でもあります。
また、これを作る料理人が、ヘンに色気を出して余計なことをすると、たちどころにバランスを崩した料理になってしまうんです。
だからオレは、一切余計なことをせずに作っているわけです。

ウチでお出ししている料理は、北イタリアの古典的な料理の定番中の定番、みたいな料理ばかりです。
上にも書いたように、オレ自身が何も手を加えず、現地でやっているのと同じように作った料理ですから、そういう意味では、これ以上『マンネリ』と言える料理はないんじゃないかと思うくらいですが。


先日、Facebookを見ていたら、こんな記事をみつけました。

あぁ、やっぱりオレだけじゃないんだ、って思いましたね。

オレは、この仕事を30年以上もやっているわけですから、それ故、抽斗は結構あると思っていますが、その中で、自分が本当に美味いと思う料理、本当に好きな料理というのは、そんなにあるものじゃないんですよ。
自分が本当に良いと思わないものは上手く作れるわけがないですから、作る料理のレパートリーというのは、必然的に限られてくるわけです。
その決して広いとは言えない守備範囲の中でやっているわけですから、作るものがマンネリ化するのは当然の事なんでしょう。
でもね、オレはその事に誇りを持っているんです。

今から14年も前、赤坂で働いていた時の事、当時大人気だった『料理の鉄人』から、出演のオファーを受けた事がありました。
出演する予定の人が出られなくなったため、ピンチヒッターとしての依頼でしたが、オレは即座に断りました。
だって、スタジオへ行って初めて素材を知り、それに合わせて料理を作るなんて、明らかにオレの守備範囲から外れているんですから。
当然受けてくれるだろう、と思って来ていたフジテレビの担当者は、どうして?って食い下がってきましたから、オレはこんなふうに説明しました。

カラオケのレパートリーについて考えてみてほしい。
次から次へと新しい曲をレパートリーに取り入れていく人もいれば、本当に好きな曲だけをじっくりと暖めて自分のものにしていく人もいるでしょう。
オレは明らかに後のタイプなんですよ。

担当者は理解してくれたようで、別の人を探すべく、すぐに帰っていきましたが、後で会社の上の人から、出れば宣伝になったのに、ってさんざん言われました。
でもオレは、自分にウソをついてまで生きたくないし、やっぱりそういう生き方しかできないんでしょうね。

まぁね、目新しいメニューを次々に出していく方が、お客さんを呼びやすい事は確かです。
でもね、それで来てくれるお客さんは、すぐに次の新しいものを見つけて行ってしまうんですよね。
ウチの常連のお客さんの多くは、「いつものヤツ」を食べに来てくれるわけだし、そういうお客さんは、ウチの事、というか、オレの事を、よ~く解って来て下さるのだと思っています。
だからオレは、これからも、同じ料理を変える事無く作っていきますよ。



そういえば、オレのカラオケのレパートリーは、もう20年以上も殆ど変わってないなぁ・・・・
誰にもマネが出来ない曲ばかりだし、それだから、誰とも比較される事はないんだけど。


では、また。
Ciao. Arrivederci!!  

Posted by spock at 07:56Comments(0)料理